ワクチン接種ルーレット(6)最終回

企業側はワクチン開発は他社との競争ではなく、競争すべき敵はコロナウイルスであると言う。
しかし誰の目にも明らかなように、ワクチン開発は利益追求の最前線であり、市場(株式相場)を陶酔状態にさせるカジノルーレットでもある。
今回の冒頭で現在の世界は理想社会ではないと言っているが、理想社会とはどのような社会であろうか?
私が思うには、カジノルーレットが回らない社会であり、カール・ポランニーが『大転換・市場社会の形成と崩壊』で述べているように、市場という「悪魔のひき臼」がすべてを粉々に砕き、粉々になるまで退路のない社会ではなく、「互酬性」と「再配分」を基調とする新たな経済社会であろう。
それなくしては、社会正義や気候正義の実現は不可能であり、人類は滅亡するしかないだろう。
尚ドイツ第一放送(ARD)のこの作品は、私自身が50年近くも前、製薬会社の化学研究室で抗免疫剤開発をしていたこともあって、興味深いものであった。
当時は疾患部細胞を鍵穴と見なし、有効物質に化学合成で鍵を付けることで増強するというやり方で、殆ど体の免疫作用機序も知らずに取組んでいたが、サリドマイドやキノホルム(スモン病)など多くの薬害が問われる時代でもであった。
今回のワクチン開発では、コロナウイルス突起部の人工合成の遺伝子情報(mRNA)ワクチンであったり、またコロナ感染で苦しむ患者には患者体内に生ずる抗体をCHO細胞培養で大量生産するという薬剤開発にも、驚くものを感じた。
しかもこの作品は、そうした現場をドキュメンタリーで描くだけでなく、現在進行形のコロナ禍で様々な問題を投げかけており、必見の価値はあるだろう。